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デルムッド出産後のラケシス

959年冬も近くなった秋のシレジア・セイレーン

デルムッド生後1,2ヶ月ぐらい。雪も降り始める。

祖国の滅亡とエルトシャンの死から1年経過
ノディオンは今どんな状況なのだろう。イーヴたちは無事でいるだろうか。

未だにラケシスの心にはエルトシャンの死の責任が自分にあるという思いをぬぐうことができない。
その度に、自分の説得がなければ両軍にもっと多大の犠牲が出ていたのだと言い聞かせてはいる。
そしてどう転んだところで、エルトシャンは死を免れぬ運命にあったのだと。
あの時は生きていることも、狂わずにいることも不思議なくらいの喪失感だったのに、こうして生きていて新しい命を授かった。
その時は良かれと思った自分の選択が正しいのかどうかはわからない。
しかし少なくとも、今生きていることだけは正しいと信じたい。

シレジアのラーナ王妃の厚意で送る亡命生活。
何か見えない大きな力が背後にうごめいていることを感じる。

今は亡命生活。でもアグストリア復興の夢を捨ててはいない。でもそれも、望む人があってこそ成し遂げられるのだ。
しかし生まれたデルムッドや遠くにいるアレスにそれを押し付けることだけはしたくない。
どんな身分であっても、幸せに生きていけることが第一。
「俺は今まで、その日暮ぐらしの傭兵をしていければそれでいいのだと思い込んでいた。」
でも、この人は変わった。
ラケシスもまた、国も身分も失くしたことだけなら惜しくはなくなっていた。

ラケシスはデルムッドに子守唄を歌う。
生きていたからこの子に会うことができた。

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ラケシスとブリギッド(シレジア結婚前)

セイレーンに落ち着いたラケシス。
その夜は眠れず、気分を変えるために湯浴みに行く。
大地の剣は枕元に置いておいたまま。

季節はまだ秋のはずではあるけれど、シレジアの秋は温暖なアグストリアのノディオン育ちのラケシスにとっては名ばかりのものだった。それでもまだシレジアでは秋であるという。これから迎える冬はとても想像できたものではない。

ラケシスはベオウルフと結婚することになっていた。
その話を聞いたシグルドは「少しでも明るい話はあるほうがいい」と歓迎を見せた。
そのシグルドはセリスに救われている状態。
シレジアのラーナ王妃に報告をすると、「雪の降らないうちに」と言ってくれた。
ベオウルフは、「本当に、俺でいいのか?」と承諾をしたラケシスに驚いていた。
受けなければ去ると言ったから受けたのだ。
湯につかると、アグストリアの頃から様々なことが頭に浮かんでくる。
空には上弦の月が光る。
落ち着く結論は、「こうなったら、どこまでもシグルド様について行く」

改めて過去に思いをめぐらせていたラケシスは、人の気配に振り返る。
ブリギッドだった。
一瞬エーディンと彼女とどちらかわからなかったラケシスではあるけれど、シグルドによれば「全然似ていない」という。
エーディンの体はほっそりとしているが、ブリギッドの体は絵画に登場する女神のごとく豊満で、ラインは全然違う。
普段は白いバンダナで隠されているブリギッドの額は、このときばかりは顕になりウルの聖痕をラケシスにさらしている。
ラケシスはついその額を凝視してしまっていたことに気づき、謝る。
「ごめんなさい」
「大丈夫。気にしないで。これが額に出たのは今思い出すとエーディン達と別れてからだった。エーディンと再会してようやく意味がわかった。」
「こういうアザがあるのは私だけでないとわかっただけでも安心した。」
それより、とブリギッドは続けた。
「結婚するんですって?」
ブリギッドもまた、ラケシスの事情、一連のアグストリアの出来事を知らないわけはない。
彼女とラケシスは、まだ知り合って間もないものの。
エーディンはアグストリアの地でようやく生き別れの姉に再会したのに対して、ラケシスは最愛の兄を失った。エーディンを羨ましくないといったら嘘になる。
立場が一番近いのはシグルドだろうか。
ブリギッドは続ける。
「この町には、何回か来たことがある。」
わずかだが、アグストリアの人間も住み着いていると続けた。
この町は真冬でも凍らない港町だ。漁港として発展してきたから、世話になってきた。
「ラケシスは、あの人と出会ってどのくらいなのかしら?」
「え? どうして? ……一年と半年近くかしら」
「そうよね、本当はそれぐらいの時間が必要よね」
それにラケシスはミデェールのことを思い出す。
この人は、初めて「恋」というものを知ったのかしら?
その気持ちに動揺と戸惑いを覚えている。
しかしその一方で抑えきれない情熱にあふれている。
その彼女の心をとらえたミデェールはエーディンの騎士だった。
一見すると女性にも間違えそうなぐらいに線の細い。
この二人は出会ったばかりだというのにどのぐらいまで進んだ仲になっているのだろうと下世話なことを想像してラケシスは恥ずかしくなる。
この人の美しい体はあの人のものになるのかしら。
かつてはあれほどエーディンに執着していたのに、ブリギッドに出会った途端人が変わったようになってしまった。エーディンは今のところ素直に喜んでいるようにすら見える。単純なのかしら。それとも、ミデェールは同じ顔ならいいのかしら。そんなはずはないわ。身代わりなわけない。ベオウルフはエルト兄様とは似ていない。
「美しいなんて言われたの今まではじめてよ」
「そんな、信じられない。女の私ですら見とれてしまうぐらいきれいなのに。」
私は容貌でほめられたことなどかつてない。
それなりにほめられたことはある。服が似合っているとか。
私は自分の容貌のことぐらいはあきらめている。でも、あの人だってそれほど顔がいいわけでもないのだからいいのかもしれないわ。
「シグルド様とディアドラも、出会ってすぐに一緒になったのよ」
それでも、ずっと愛があった。
「ディアドラ、一度会ってみたかった。あまり皆話さないからな」
「私の兄は、結婚まで一度しか会わなかったそうよ。」
それでも愛はあったのだと、今では確信している。
ブリギッドは興味津々な顔つきでラケシスを見つめている。
「私は、結婚なんて考えたこともなかった。」
兄と別れる悲しさは、嫁ぐ喜びを上回るものだった。
結婚を決意したのも、兄がいなくなったからだ。
でも、自分でも信じられないぐらい平気でいる。
立ち直ったのか現実感がないせいなのか、もう心が死んでしまったからなのかわからない。
忘れてしまいたい気持ちと、忘れることの恐ろしさがないまぜになっている。
兄のような人がいたところで、きっと些細な違いに我慢ができなかったのかもしれない。
「私もよ、ラケシス。」

翌朝、ベオウルフが「随分ときれいになった」と褒める。
ラーナから送られたブーケが部屋に届いている。
白いバラと淡いピンクを中心に丸型に彩られている。
雪はまだ降らない。
セイレーンの教会からは海が見えた。

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ホリン・エバンスにて

いまここは、確かにヴェルダンであるはずだった。それなのに、彼女の周囲だけはイザークだった。それを認めたとき、ホリンがそれまで封印していたはずの全ての過去が洪水のごとく押し寄せていた。

目の前の風景が信じられない一方で、闘技場で戦う彼女を凝視しないわけにはいかなかった。

審判は、彼女をこう呼んだ。
「イザークのアイラ」と。

アイラと呼ばれる女性が対戦相手に繰り出す技は、流星剣だった。
もう、使えるようになっていたのだな。

エバンスに落ち着いてからの生活は、闘技場と部屋の往復がすべての潤いのない生活で、それに何の疑問すら感じていなかった。そして、国を捨てたことすら忘れていた。

七年の歳月のうちに、あの時に生まれたばかりの赤子は少年になっていた。
そして、あの時はまだ肩にもつかない長さだった少女の髪は、すっかり長くなっていた。
かつての少女はもう、国を出たときのホリンの年を越えていた。

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聖戦その後エーディン・ユングヴィにて

昔から川を見ることが好きだった。
川の向こうには、どこよりも深く静かな森と、
どこよりも澄み切った湖の国があると聞いていた。

しかし、朝霧が立ち込めると、川の向こうは見えない。
そして雨が降り、川の水かさが増すと、
また、森と湖の国は遠くへ行ってしまう。
しかし、雨が上がると、時には虹の橋が架かるのだった。

それが永遠の別れとなった夜も、外は雨が降りつけていた。
その日は遠くなり、思い出となった。
しかし雨音は今も、私の心に静かに降り注ぐ

川のせせらぎは今もなお優しいけれど、
時々川の水かさが増せば、せき止められていた思いもあふれ出しそうになる。
春の雨に静かに揺れる川の水面は、私の顔もまた揺らす

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エーディンはユングヴィ帰国と同時に事後処理および復興に甥のファバルともども奔走する日々。

コノート孤児院のその後→グレイドとセルフィナに委託される

ファバルとは実の母子以上に密な間柄になる

ティルナノグでの生活の反動か、ユングヴィでは以前からの趣味に走る。
ガーデニング、レース編みなど。また、イザーク文化を紹介
その他回顧録を書き晩年にはまとめる。

ブリギッドの部屋はあの時までいつ彼女が戻ってもいいようにとっておいてあった。
もうかつての面影はなかった。でも、たしかにそこは故郷。

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